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▷ 『有機農家の手前味噌づくり』イベントリポート

小川町で有機農業を営む「だいこんや農園」の赤堀香弥(かや)さんに、オンラインで手前味噌づくりを教えていただきました。材料は、小川町の青山地区発祥の、“青山在来大豆”と、米麹、こだわりの塩。オーガニックな味噌を仕込みました。
“みんなが手前味噌を仕込むような暮らしを”という想いから、ご自宅でも作れる形式とし、講師の赤堀さんには、コワーキングロビーNESTo内から配信をしていただきました。そんな2時間のイベントの様子を、NESToスタッフ(NPO法人あかりえ)の高橋がレポートします。


プログラムは下記の通りです。

10:00 参加者がZoom上に入室して、イベント開始
10:05 小川町やNESTo・ゲストの紹介など
10:10 参加者自己紹介
10:20 味噌仕込み開始
11:45 仕込み袋に書き込みタイム!
11:50 味噌の育て方レクチャー
11:55 感想シェア

 

小川町と味噌づくり

いまや“有機の里”として広く認知されるようになった埼玉県小川町では、農業体験イベントも、田植え&稲刈りやもちつきなど、年間を通じて様々なものが開催されています。2〜3月にかけては、例年、あちこちで味噌仕込みが行われます。

農家に限らず、町内の一般家庭でも大豆や麹を購入して仕込んでいる方は多く、小川町らしさだなと感じます。

今回、講師をお願いしただいこんや農園の赤堀香弥さんは、最近は自主開催でもオンライン味噌仕込みをされている農家さん。1シーズンでは400〜500kgほども仕込まれるそう。オンラインという形式を試みられている貴重な存在です。

使用する大豆は「青山在来大豆」、米麹の米は「農林48号」。どちらも、だいこんや農園で、無農薬無肥料で栽培されたものです。

この「青山在来大豆」というのが、小川町の在来種で、これを使用した醤油や豆腐などがつくられています。色が薄い緑色で、糖度が高めなのが特徴。麹は、麦麹と米麹、生麹と乾燥麹、と、これも各々個性が出てきますが、今回は、米の乾燥麹を使用しました。

 

2日前からの準備

オンラインなので、材料は、赤堀さんが量って袋に詰めた状態でキットにしてくださいました。都内など遠方の会員さんへは宅急便で、お近くの会員さんはNESTo直接受け取りで、3日前には、それぞれのお家にキットが届きました。

味噌仕込み自体は、3つの材料を混ぜる、というシンプルなものですが、乾燥している豆を柔らかくするところまでは、イベント前日までに各自で準備していきます。

キットの中にある「オンライン味噌づくりの手引き」を参考に、家にある調理器具を使って行いました。

まず、2日前には、大豆を浸水させます。洗って、一晩水に浸けると、大豆の形が丸から細長い形になり、量が大きく増えてました。3倍ほどの量の水に浸けていたはずなのに、表面の大豆が空気に触れるほどの膨らみ!900gもの大豆を一気に戻す体験も、味噌づくりならではですね。

そして、前日は、大豆を煮ます。大きな鍋に大豆とひたひたの水をいれ、60〜90分間加熱。今回は圧力鍋を使った参加者が多く、赤堀さんが驚かれていました。圧力鍋を使用すると時短になります。

この時点で、部屋には甘い香りが立ち込めるので、「いくつか味見しちゃいました」とおっしゃっる方も。


煮汁も栄養満点。人によっては、味噌仕込みの際に、この煮汁で水分量の調整をすることもあるのだそう。使わない場合も、捨てずに他の料理に使用するのが良さそうです。

煮えて柔らかくなった豆は、粗熱を取ってから冷蔵庫へ。あとは、当日を待つのみです!

オンラインで味噌仕込み!

2月19日土曜日。参加者は10時にZoom上に入室。

まず、小川町やNESTo、そして、講師の赤堀さんの紹介などを行いました。小川町に来たことのない方もいらっしゃり、チャットには「コロナが落ち着いたら行ってみたいです!」というコメントもありました。

赤堀さんには、少し自己紹介もしていただきました。その日は、早朝から、ヨガのオンラインクラスに参加されてからの、このイベントだったそうで、「なんでも(オンラインで)叶う時代になりましたね」とお話しされていました。

続いて、参加者同士の自己紹介。NESToによく来てくださっている会員さんや、スタッフの友人、お母さんが仕込んでくれていたのを思い出して興味を持ってくださった方など、いろんなルートから来てくださっていました。

 

それらを20分ほど行った後は、いよいよ味噌を仕込んでいきます!

最初に、豆を潰します。豆がどんな状態で煮えたか、潰し加減はどうか、画面越しに見せ合ったり、赤堀さんにコメントをもらったりしました。

保存していたジプロックに入れたまま、げんこつ(足でも可)やめん棒などで押して潰していきます。ミキサーやミンチャーを使う場合もあるそうですが、せっかく手前味噌なのなら、少しムラがあって、豆感も楽しめるのは良いなと思います。

時間をかけて潰したら、ボウルに出して、麹と混ぜ合わせていきます。ボウルのサイズが小さい人は、半々に分けて作業しました。

均等に麹が混ざるように、念入りに手で混ぜていきます。個人によって、手のひらの常在菌が異なるので、できあがる味噌の味も変わってくるのだそう。コロナ禍では、素手で食品に触れることもめったになくなってきていますが、菌や発酵の世界は不思議です。

潰す工程、混ぜる工程は、それぞれ20分以上かかったので、その間にスタッフから赤堀さんへ、いくつか質問をさせていただきました。

ここでは詳細は割愛しますが、都市開発コンサルタントのお仕事から農業の現場に入ってこられた経緯や、就農してからここまでの試行錯誤についてなど、印象的なお話をたくさん聞かせていただきました。

バリバリ働く生活から12年前に農家になった移住者として、3人のやんちゃ盛りな息子のお母さんとして、自身の身体と暮らしに向き合う女性として…。赤堀さんとダイレクトにおしゃべりできることも、このイベントの大きな魅力だと感じました。

さて、混ぜ終わったら、保存袋に詰める最終工程に入ります。

おにぎり大の味噌玉をつくって、一つずつ空気を抜いていきます。一通り、玉にできたら、透明な保存袋のそこの方からみっちり詰めます。

袋の口に味噌がつくと、そこからカビてしまうこともあるので、気をつけます。

上まで詰め終わったら、空気が入らないように口を閉じて、完成です!

味噌を育てる

ここからの味噌の扱い方としては、陽の当たらない場所で保管して、梅雨の時期にカビのチェックをするくらい。10月の頭くらいから食べられるようになります。

「混ぜるだけで、あとは菌が勝手に仕上げてくれるなんて、なんて楽なんだろう」と赤堀さんもおっしゃっていましたが、本当にその通りですね。

真っ黒の熟成味噌が作りたければ、開封せずに2年3年置いておけば良いそう。寝かせる時間に比例して、腸内環境を整える効果もアップするようなので、味噌仕込みに慣れてきたら試してみたいものです。

実は、今回のキットには、だいこんや農園さんの自家製味噌のおすそ分けを入れていただいていました。

いただくと、塩味よりも麹の甘さがしっかりしていて、味わい深いお味噌でした。

コツとして、「お味噌に言葉をかける」ということを教えていただきました。微生物に声や音楽など、音ではたらきかけると、発酵に影響があるという通説はあるそうで、これから10ヶ月以上“育てていく”のだという実感がわきました。

ちなみに、特に良い言葉は「ありがとうございます」とのこと。

そんなことから、透明仕込み袋には、マーカーで各自メッセージも書きました。

来年、どんな味噌になっているのか、今回一緒に仕込んだメンバーで比べられたらおもしろそうです。

最後に、感想共有をした中で、「一人だとくじけてしまいそうだけど、みんなと一緒にできるので楽しく時間が過ごせた」という声もありました。

小川町内では、コロナ前は、近所や仲の良い知人で集まって仕込むという話をよく耳にしましたが、数人でわいわい仕込むと、自分たちも楽しいし、きっと味噌もおいしくできあがるんじゃないか、なんて思えます。

受け継がれる“農”の文化に触れ、日々の暮らしを省みる。今回は、そんな体験ができました。

赤堀さん、参加してくださった皆さんに、感謝いたします。

 

主催:石蔵保存活用協議会

※この事業は、埼玉県ふるさと創造資金の補助を受けて実施しています。

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