INFORMATION

▷ 『受け継がれる手仕事 しめ飾りづくり』イベントリポート

小川町には、現在まで受け継がれる昔ながらの習わしがあります。その中でも、お正月を迎えるにあたって「しめ縄」の作り方を習得しよう!と、この度、地元のNESTo会員さんとスタッフとで、地元の方に教えていただきに行ってきました。ワークショップの形で、材料や会場もご提供いただき、初心者でもしっかりとしめ飾りをつくることができました!そんな当日の様子を、 NESToスタッフ(NPO法人あかりえ)の高橋がレポートします。

プログラムはこんな感じでした。

13:30 コワーキングロビーNESTo集合
14:00 前高谷区民センターに到着
14:15 講師の山岸さんからの説明、自己紹介
14:30 しめ縄づくり
15:30 紙垂(しで)付け、振り返り
16:00 解散

 

地域の方のための「前高谷区民センター」

風が冷たい冬らしい晴れの日に、参加者はコワーキングロビーNESToから、会場となる「前高谷区民センター」に向かいました。

車で5分ほどで到着。和室と台所、そして大きな多目的ホールがあるきれいな公民館でした。

はじめに、本日講師を引き受けてくださった山岸さんから、この場所についてご説明いただきます。

「前高谷区民センター」は、天手長男神社の一角にあり、地域の方たちからの多くの寄付によって建てられたのだそうです。

4月の第3日曜日には、天手長男神社の例大祭、通称「お手長様(おてながさま)」が開かれ、各家庭から、野菜やこんにゃくなどの手料理を持ち寄って、にぎやかに直会(なおらい)を行うのだと教えていただきました。

地域の方によってつくられ、今も、地域の方同士の親睦を深める場としてつかわれている建物なのですね。

 

「えらいことを引き受けちゃったな…」

場所の説明の後は、いよいよ、本題、「しめ縄」についての話題に移っていきます。

今回、参加者のほとんどが初めての体験になるため、まずぐるりと一周、自己紹介も兼ねて今日の意気込みを述べました。

「このような昔ながらの文化に触れられるのが楽しみです。」「今日は、初めてなので、しっかり学んで帰りたいと思います。」各自、素直な気持ちを言葉にしただけだったのですが、

それを聞いた山岸さんは、「いやぁ、…えらいことをひきうけちゃったな…。今、ちょっと動揺しています。」と、困り顔。

小さい頃から、28日になるとお母さんのいう通りに、山から採ってきた竹や松を杭に縛って、その辺の藁で縄をなって、紙垂を入れて、最後に、玄関・お手洗い・車庫など家中に飾って…。長男なら、当たり前に毎年行うことで、参加者からの大層な期待に驚いてしまったのだそうです。

でも、実際に小川の家庭に代々伝わる技を直伝していただけるということなので、やはり、ありがたいですよね。

 

しめ縄づくり体験

しめ縄づくりは、玄関の外で行いました。

まずは、稲藁の山から、一掴み抜き出し、手ぐしで細かい葉や折れて短くなったものを取り除きます。きれいな縄をつくるための一手間ですね。

続いて、穂先を残して、ホースで水をかけます。乾燥した藁を一度濡らすことで、しなやかになり、縒り(より)がかかりやすくなるのだそう。

ここまでいったら、いよいよ、縄をなっていきます。

椅子に座って太ももで押さえたり、地面に立膝をついて足裏で押さえたり、藁束の根元を固定して、2等分します。太いと手に収まらず難しいので、山岸さんの教えで、合わせて10本ほどで始めてみました

2つに分けた藁を手のひらで挟み込み、それぞれが縒られるように手をずらします。上手く捻れていたら、2本をクロス。先ほどと前後を入れ替えて、また縒っていきます。

山岸さんのお手本は、スルスルと簡単そうなのに、普段の生活ではまずしない手の動きを真似するのは非常に難しかったです。

だんだん慣れてくると、参加者同士でもコツを共有しあったり、完成品を見比べて見たり、わいわい楽しみました。

夢中でつくって、たくさんのしめ縄ができました。

少し太めに挑戦してつくった縄は、輪にして、山岸さんに藁でとめてもらいました。

ひとしきりつくって、各自、「これを飾ろう」というしめ縄が決まったところで、作業は終了。

近くの八和田神社の紙垂をわけていただいて、縄の一部に挟みこみます。すると、不思議なことに、“稲藁の縄”がとたんに“しめ飾り”に姿を変えました!

たくさんできたので、玄関だけでなく、いろいろなところに飾れそうです。

 

「当たり前」の手仕事

寒い外での作業だったので…と、山岸さんが、お茶とたくあん、ゆず湯を出してくださいました。たくあんにかけても美味しい、手作り七味も。

それらをいただきながら、今日の振り返りをします。

始まる前に動揺しているとおっしゃっていた山岸さんは、「なんてことなく、“正月が来るからやるんだい!”と思っていたものから、みんながいろいろ感じ取ってくれることが新鮮でした。」と、笑顔で話してくださいました。

しめ縄だけではありません。たくあん・ゆず湯・七味も、山岸さんにとっては、畑や庭でとれた材料を使って、日常の中で作られているものです。

「他にも、何か体験したら面白いものはありますかね。」と質問すると、野鳥を捕まえるための手作りの罠や、昔の遊び道具のことなど、聞かせてくださいました。

山岸さんは、毎春、鬼ヶ谷津(おにがやつ)沼でポピーを咲かせているそうで、以前に前高谷の区長をされていた時は「ポピー祭」も企画されていたとのこと。

「当たり前」なことは、地元の人にとってはなかなかその価値を認識しづらいと思います。そんな中、こうして山岸さんのように、ワークショップ講師をしたり、人が集まる場をつくったりしてくださる方はとても貴重な存在ですね。

お正月は年に一度。つまり、しめ飾りをつくるのも年に一度。2022年の暮れにNESToのスタッフがつくり方をまだ覚えているかどうかはわかりませんが、また会員さんと一緒に、新年を迎える準備ができるよう、一年間健やかに過ごせたらと思います。

参加してくださった方、そして、山岸さん、本当にありがとうございました。

 

主催:石蔵保存活用協議会

※この事業は、埼玉県ふるさと創造資金の補助を受けて実施しています。

関連記事