▷ 「土地と人がつなぐ、埼玉の食『Sait Table』」イベントレポート
2月25日土曜日、コワーキングスペースNESToにて、埼玉の新たなフードカルチャーを体感するイベント『Sait Table』が開催されました。
『Sait』は、埼玉という土地ならでは(Site)の魅力を見つけていく(Sight)取り組みです。
食をはじめ、工芸や自然、歴史や民俗などを横断しながら、埼玉を探索し、編集し、表現しながら、日本中、世界中とつながる取り組みにすることを目指しています。
今回開催された『Siat Table』はまさに『Sait』という取り組みの第一歩となるイベントになりました。
企画は小川町を拠点とするクリエイティブチーム「UNE STUDIO」。
かつて養蚕・絹織物業が盛んだった小川町には、絹の保管庫として用いられたと考えられる、石蔵も現存しています。そういった小川町の歴史をも感じられるよう、会場となるNESToの天井からは絹を垂らす工夫が施されました。
他にも、メニュー表の一部には和紙の生産地である小川の和紙を使用したり、この土地で採掘された青石をキャンドル受けとして配置するなど、会場の端々に埼玉、そして小川町の魅力を散りばめたこの空間には、味覚だけでなく、土地の空気を五感で感じる『Sait』ならではのこだわりがありました。
今回のコース料理を構成していただいたシェフは大宮でレストラン、ブーランジェリー、パティスリーの3業態にて埼玉の食材を積極的に取り入れた、地元でも人気のお店「restaurant Blanc」を営む大谷洋平さん。(ブーランジェリー:Blanc a la maison パティスリー:masayuki nakamura by blanc)
ドリンクの構成には日本各地のナチュラルワインを扱う「KIKI WINE CLUB」がアルコール/ノンアルコールを用意してスタートしました。
当日は、食材を提供してくださった2世代で有機農業を営む「横田農場」の横田岳さん、3年前に新規就農した「SOU FARM」の柳田大地さんに、食材の魅力や、風土、紡がれてきた小川町の農について話していただき、運ばれてくる一品一品を堪能していただきました。
目の前の大豆がどのようにしてここにあるのか、大豆が日本に来て1000年以上経っているということは、誰かが1000回以上種を撒き続けてきたからであること。
土地の歴史に目を向け、在来の野菜を繋ぎ続けることを大切にしている横田さんのお話は、この土地の風土がどういったものなのか、どのように紡がれてきたのか、小川町という土地そのものを感じられるものでした。
「SOU FARM」の柳田さんは、不耕起栽培で野菜を育む農家さんです。野菜たちを、こう育ってほしいという規格の枠にはめるのではなく、野菜自身がもつ力で育って欲しい、それがその野菜らしさであり、畑らしさになるのだとおっしゃっていました。
今回、コース料理の中で1番の驚きがあった藁の泡のソースは、横田農場の藁を使用しています。
藁を使用することで、香り高く土を感じさせるソース。
大谷さんは、横田農場の畑自体を表現したいと思い、一番最初に藁を使うことを決めたそうです。
大谷さんは、横田農場とSOU FARMを何度も訪れていますが、実際に畑を見て、土に触れた大谷さんだからこそ生まれるこの季節ならではの一期一会の料理に、ただ驚くばかりでした。
今回『Sait Table』に来てくださった皆さんも、美味しい料理と、小川町の農や歴史の話を聞いて、小川町の風土そのものを味わっているようだったと、とても満足してくださっていました。
守られてきた風土、そして作り手である農家さんと料理人の想い、共有する空間と食べ手。それらが織りなし完成された『Sait Table』。
今回初めて形となったこの取り組みは、これからも進化して、埼玉そして小川町の人や、風土の魅力を紡ぎ、発信していく場になると感じる一日となりました。
主催:石蔵保存活用協議会
※この事業は、埼玉県ふるさと創造資金の補助を受けて実施しています。