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▷ 『〜有機の里 小川町で遊ぶ〜落ちコロ大作戦!』イベントリポート

埼玉県小川町にある「おちばたんの森」で、有機堆肥づくりのための落ち葉を楽しく集めるイベントが行われました。その名も「落ちコロ大作戦!」。チーム戦で落ち葉を大きな袋いっぱいに拾い集めて、スタートからゴールまで急斜面を転がし、順位を競うゲームです。楽しみながら、(株)風の丘ファームの田下三枝子さんや、小川町の方々に山のことを教えてもらいました。そんな様子を、NPO法人あかりえの高橋がレポートします。

プログラムは下記の通りです。

10:00 駐車場から鬼ケ谷津 「おちばたんの森」へ徒歩移動
10:30 落ち葉集め
12:00 昼食
13:00 森での楽しい遊び方講座
13:30 落ち葉転がし
14:30 重量チェック・結果発表
15:00 焼き芋・お土産購入
15:30 解散


堆肥づくりの循環の中にある「おちばたんの森」

「おちばたんの森」は、小川町の鬼ケ谷津(おにがやつ)にあります。谷津というのは、小高い山に囲まれた谷のこと。ここは、奥に進むと鬼ケ谷津沼という沼もあります。バイパスと団地に挟まれた場所にあるにもかかわらず、静かで、春には地元の方の手によって、一面にポピーの花が咲くような場所です。

そして、この「おちばたんの森」の管理を行うメンバーの中心が、先日のトークイベントでもご登壇いただいた(株)風の丘ファームの田下三枝子さん。(▷記事はこちら)地元の農業者や消費者も巻き込んで堆肥づくりを行う中で、その材料である落ち葉の収集場所として、そして、山遊びの体験の場として、整備をし続けています。

山の中は手入れが行き届いていて、急坂とはいえ歩きやすく、とても日当たりがよかったです。

今回のような落ち葉転がしの他、間伐のワークショップや、ツリークライミングのようなアクティビティーが、年間を通じて開催されてきたのだそうです。

コワーキングロビーでは、下図のような資源循環を生み出す場所でありたいというコンセプトもあり、昨年11月にサーキュラーエコノミーの勉強会を行いました。その後、自分達で勉強会を行うなどして知識を深めていましたが、この度、実際に土づくりの現場に触れられる機会をいただき、このイベントの開催に至りました。


▷詳細はこちら

 

いざ、森の中へ!

1月28日土曜日の朝10時。森の近くの駐車場には、約30名の参加者が集合しました。都内から来た方、地元に移住してきた方、いろんな方が参加してくださいました。

到着した方から、こなら・くぬぎ・ひのき・すぎ・しらかし、という5つのチーム分けを聞いて、名札を書いていきます。

長い距離を車で移動してきた子どもたちは、気持ちの良い青空の下に飛び出て、すでに元気に走り回っています。寒波で雪の予報も出ていましたが、お日様が出ているおかげで、ぽかぽか気持ちの良い日でした。

大半の参加者が揃った頃、何やら、鎧を身につけた武将が姿を現しました…!

彼は、「おちばたんの森」を守る冬将軍の「落葉はき政」というそうで、一瞬で子どもたちの心をつかみ、その流れで、近くの山へと歩いて行くことになりました。

集合した駐車場は、大きな道路の交差点にあり、あまり自然を感じる場所ではありませんでしたが、歩いて程なく、山に囲まれた静かな空間へと景色が変わりました。

そして、「おちばたんの森」に到着!

落ち葉を転がす競技なので、まずは、スタート地点である山頂まで登らないといけません。かなりの急な坂を、ロープを伝いながら登りました。小さな子は、親御さんが抱っこしたり手を繋いだり、サポートしていました。

 

地域で活動するスタッフの面々

山頂に到着すると、皆で丸くなって、今日の流れの説明を受けました。

午前中に落ち葉を各チーム3袋ずつ詰めてお昼休憩、午後は、山の探検を挟んでいよいよ転がして順位を出す、という手順です。

地面には、熊手や青いネットでできた袋が置いてあります。

そして、今日一緒にチームに入ってくれるスタッフの皆さんの紹介がありました。

まず、田下さん。今日は、お昼ご飯の豚汁や羽釜ご飯の準備までしてくださっているそう。また、ゲームの賞品やおみやげ用のお野菜も、田下さんにご用意いただきました。

「昔の人は落ち葉で肥料をつくっていたけど、化学肥料が便利でだんだん使われなくなっていきました。でも、有機農家にとって、土が健康であることはとても大切です。だから、落ち葉を集められる場所を作りたいと、森の手入れを始めました。」と田下さん。

こうして、本来大変な作業である落ち葉集めを、みんなで楽しんで行えるゲームにしてしまう発想が素晴らしいですね。

お二人目は、生き物や植物に詳しい、おがわっこ保育園の石井克彦さん。参加する親子に、森での楽しい遊び方を教えてくれる役割として来てくださっています。

「落ち葉を集めながら、気になる発見があったら、覚えておいて後で教えてね。」と、優しくお話してくださいました。

三人目は、給食の残飯などでバイオガスと液肥を生み出す、バイオガスプラントの運営をしているNPOふうど(小川町風土活用センター)の松澤聡さん。

「おちばたんの森」の管理にも携わっていらっしゃって、今回も、会場整備からイベント運営まで、一緒に盛り上げてくださいました。

そして、小川町役場と地域おこし協力隊メンバーがスタッフとして、各チームに分かれて入ります。

 

大人が本気で楽しむ落ち葉集め

5チームが3袋ずつ集めるので、合計15袋の落ち葉というと、かなりの量になるように思いますが、森には、たっぷりと乾いた落ち葉があり、みんな広がって作業することができました。


まず、熊手を使ってかき集めます。田下さんが各チームを回りながら、手伝ってくださいました。ザッザッとリズム良く、全身を上手く使うと、手早く集めることができるようです。

そして、袋に入れるときは、チリトリのように袋の口を大きく開けて、中に流し込む!


最初は子どもたちも両手に落ち葉を抱えて作業していましたが、途中から、集められた落ち葉に埋もれる楽しさを見つけた様子で、熊手で落ち葉をかけてもらったり、袋の中に入ったり…。

一方で、スイッチが入って、本気モードの大人の方々は、転がりやすい形状を目指して袋の端をしばってみたり、よりたくさん詰め込むために木を道具として利用したりして、大変楽しそうでした。


落ち葉をたくさん詰め込むコツは、袋の側面に沿ってぎゅうぎゅうと押し込んでいくこと。そうすると、1枚1枚の葉の形状が見えないくらいに潰れ、自然に坂を転がってしまうような球体になってきます。

昔ながらの方法で背負いカゴを担いで落ち葉を集めに行く場合は、往復する回数を減らすために一度にたくさん詰め込むことが大事だったのだろうなと思います。

 

里山の恵みを味わう、手作りお昼ごはん

12時を過ぎた頃、15袋がパンパンになり、お昼休憩をとることにしました。

今日のメニューは、羽釜で炊いたご飯と、野菜たっぷりの豚汁、そして、ご飯のお供の漬物など。小川町の有機のお米や野菜を味わいました。


ご飯を炊き、豚汁を温めるために、火起こしもしました。油分があって燃えやすいスギの葉や、焚きつけ用の細い枝など、すぐ手の届くところから取れるのも、また山の魅力ですね。

途中で山の持ち主の山岸さんがお見えになって、この山がこうして、みんなで自然を楽しむ場をして使えるように整備したり、ハンモックや仮設トイレを用意したりしたのだとお話しくださいました。

山岸さんは、一昨年の年末に、しめ縄づくりを教えてくださった地元の方で、その際にご紹介いただいたポピー畑も、この場所の向かい側にありました。(記事はこちら(https://nesto.work/nesto/20211218/))


畦に草が生え、緩やかな溝ができているところを、子どもたちが発見して遊んでいました。

 

冬の雑木林から、春を見つける

お昼休憩の後は、石川先生と一緒に、落ち葉転がしコースを登りながら、山に生えている木や草花を観察しました。

朝は大人にお尻を押してもらっていた子どもたちも、どんどん自分の力で登っていくので、驚きました。

先ほどは、落ち葉を集めるのに一生懸命であまりじっくり周りを見ることもしませんでしたが、よく見ると、赤や青の実がついた小さな植物が所々にあります。

こうした小さな実のことを、小川町では「みんこ」と親しみを込めて呼ぶのだそう。「このみんこを鳥が食べたらどうなると思う?」という先生の質問に「消化される!」「“ふん”になる!」と子どもたちが答えます。

「上手く、根を張れる土の上に落ちたみんこだけが、芽を出して木になれるんだね。」

木々はたくさんの実をつけますが、こうして一本の木として大きく育つまでには、奇跡の連続があり、長い道のりだったのだと感じます。

続いて着目したのは、葉っぱのついていない木々。一見すると、ただの裸の木のようですが、「実は、葉っぱの赤ちゃんがあるんだよ。」と先生。

皆で、葉っぱの赤ちゃんを探しました。

途中の上り坂ではゴロンと寝転がって森を見上げるシーンも。ご飯の後でお腹いっぱいということも相まって、眠たそうにする大人の姿も見受けられました。

見つけた葉っぱの赤ちゃんは「冬芽」でした。冬の木は、葉っぱがついていないわけではなくて、寒さから守るために小さなうろこ状のカラに包まれた状態で春を待っていたのですね。

最後は、土について。小さく崩れた箇所を見てみると、土の表面と中側では色が異なります。

小さな生物が葉っぱなどを食べて、分解して、土ができていく。その過程を、そこから知ることができました。

このように階層ができた土は、ゆっくりと水を浸透させます。これが、豊かな水と豊かな山が切ってもきれない関係である所以です。

 

いよいよ、落ち葉転がし!

楽しく学びながら山頂に到着。早速、スタートラインに各チームの落ち葉玉を転がしてきてセットします。

コースは、写真からもお分かりいただけるように、かなり傾斜がついています。そして、途中には木が生えていたりカーブ地点があったりします。これは難しそう。

まず一巡目。転がす方向を工夫して障害物を避ける作戦を立てるチーム、勢いをつけてぶつかっても止まらないような作戦を立てるチームなど、ここでの戦略にも個性がでていました。

なんと、一巡目は、全チーム大成功!下まで落ち葉が転がりました。

そのため、二巡目からは丸太を積んだ障害物が追加されることに。これを綺麗に避けられたのは、流石に1チームで、あとはぶつかって止まりかけたり止まってしまったりしました。

途中で止まってしまった場合は、その地点まで行ってもう一度押して転がします。これがまた、坂道を降って登らないといけないので、一度で転がしたい!という気持ちを強めます。

二巡目、三巡目は、苦戦しながら、全チームなんとか無事にゴールさせました。

これで、基本の点数が出ました。ここからは、それぞれの重さを測って、加点していきます。

みんなで一つずつ転がしていって、ばねばかりを使って測定しました。フックを取り付けたら、「せーの」で木の股にかかったロープを引いて、落ち葉を持ち上げます。

今回も、40kg近く詰められた袋がありました。

中には転がる時に、勢いで袋が破けてしまっているものもありましたが、ぎっしり落ち葉が入っているのでこぼれ落ちることはありません。

 

森の恵みを感じる賞品の数々

全て測り終えて、得点表が埋められました。

優勝は、全部一気に下まで転がすことに成功して、39kgの大きな袋があった「ひのきチーム」。賞品は、おちばたんの森のいろいろな種類の木を使ったメダルと、有機野菜。

第二位は、一度だけ途中で止まってしまったけれど、やはり34kgの重たい玉を作れた「すぎチーム」。こちらの賞品は、20種類ほどの冬芽が並んだ標本。

入賞しなかったメンバーも、山の間伐材から切り出した小さな丸太の中から、気に入った種類のものを選びました。ヒサカキやクヌギなど、何種類もありました。

色もサイズも表面の手触りも千差万別な木や落ち葉を見て、子どもたちはどんなことを感じたのでしょうか。

参加者からは、「循環型農業のことを知れて、体験できて良かった。」「鳥や土の話など、自然環境についても学べたのも嬉しかった。」という内容についての意見のほか、

「最初に頑張りすぎてしまった。体力配分大事だと思った。」「大人が本気になる姿を見せられて良かった。」と、競技そのものが楽しかったという感想もいただきました。

この後、集められた落ち葉は、小川町の堆肥組合に持ち込まれ、他の材料と混ぜられて堆肥になります。そして、JAの直売所で販売されるのだそうです。

今回は、森の資源を使って野菜を育てるための堆肥を作る、という循環の一部分を切り取って体験を行いました。続く、2月末に予定されたイベントでは、地元の食材を「食べる」ということを趣旨としています。

このように、コワーキングロビーNESToを通じて、一人でも多くの方に、私たちの周りでいつも起きている「循環」に目を向けるきっかけを提供できればと思います。


イベントの最後は、落ち葉をはいている間に地元の方が焼いていてくれた石焼き芋を食べて、野菜やジュースのお土産をみて、各自、帰路につきました。

私たちにとっては楽しい思い出の一つですが、小川町の農家では、毎年毎年、当たり前に落ち葉を使った土づくりが行われています。興味を持ってくださった方は、ぜひ、堆肥づくりや農業体験も含めて、また、体験しにきていただければ嬉しいです。

参加してくださった皆さん、おちばたんプロジェクトの皆さん、ありがとうございました。

 

主催:石蔵保存活用協議会

※この事業は、埼玉県ふるさと創造資金の補助を受けて実施しています。

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